歯並びが悪くなる3つの理由―小児矯正で大切なポイント

米﨑 美桜

「どうして子どもの歯並びはこんなに悪くなるの?」
小児矯正を考え始めると、多くの保護者が抱く疑問です。歯列不正には大きく3つの原因があり、それぞれ対策が異なります。下記の図では、原因別に代表的な症状(叢生・上顎前突・下顎前突)が示されています(図:「原因による歯列不正の分類」表+叢生/上顎前突/下顎前突の模式図)。

① 顎の発育不足 – 歯が並ぶスペースが足りない

顎の成長が不十分だと歯列が狭くなり、結果として歯が重なり合う「叢生(そうせい)」が起こります 。このような場合は顎を適切に発育させる食習慣や咀嚼の改善が大切です 。

② 悪習癖 – 指しゃぶりや口呼吸などの習慣

口をぽかんと開けている、指しゃぶりや爪かみ、舌で歯を押す癖などは、上顎前突(出っ歯)や下顎前突(受け口)、開咬を引き起こす原因になります 。また頬杖やあご押しといった姿勢の癖も顎の成長に影響するため、日頃の姿勢や生活習慣の見直しが必要です 。

③ 先天的要因 – 歯の欠如や過剰歯

歯の位置異常や先天性欠如、過剰歯などが原因で歯並びが乱れる場合もあります 。この場合は専門的な診断と治療計画が求められます。

原因を改善することの大切さ

従来の矯正治療は「歯を並べる」ことが中心でしたが、原因にアプローチしないと治療後に後戻りが起こりやすいと指摘されています 。書籍では、機械的に歯を動かすだけでなく、原因を改めて患者自身の治癒力を引き出す「バイオファンクショナルセラピー(BFT)」の考え方を提唱しています 。

バイオファンクショナルセラピーとは?

BFTは、咀嚼・呼吸・嚥下・姿勢・その他の悪習癖という5つの機能を改善することを目的としています 。例えば、硬いものをよく噛んで顎を発育させる、鼻呼吸を意識する、正しい姿勢を保つといった日常の取り組みで、顎や歯列の成長をサポートできます。これらの習慣を身に付けることで、歯並びの問題だけでなく全身の健康にも良い影響が期待できます。

専門的なサポートを受けるという選択

歯並びの問題には成長期ならではの注意点が多く、原因を見極める診断力と、悪習癖の改善を指導するための専門知識が欠かせません。全国には、子どもの歯並びと成長について体系的に学び、バイオファンクショナルセラピーの考え方を実践している歯科医師のネットワークがあります。その代表が「日本小児矯正研究会」で、ここで研鑽を積んだ医師に相談すると次のようなメリットがあります:

  • 原因に基づいた診断と治療計画:顎の発育不足・悪習癖・先天的要因のいずれが主な原因かを見極め、それぞれに合わせた治療方法を提案します 。原因を改善することで後戻りを防ぎ、安定した結果につなげます。
  • 機能改善を重視した指導:咀嚼・呼吸・嚥下・姿勢など、歯並びに影響する生活習慣を総合的にサポートします 。ご家庭でも取り組めるアドバイスが得られるため、子どもの健やかな成長に役立ちます。
  • 最新の知見を共有する学びの場:歯科医師向けには、BFTや床矯正・マウスピース型矯正について深く学べる機会があり、患者さん一人ひとりに適した治療計画を立てる力を養えます。歯科関係者で興味のある方は、日本小児矯正研究会のセミナーや勉強会に参加することで知識と技術を深められます。

このように、専門的なネットワークに所属する歯科医師は、単に歯を並べるだけでなく、根本原因に寄り添ったアドバイスを提供してくれます。保護者の方にとっては安心できる相談先となり、歯科関係者にとっては日々の診療を高める学びの場にもなるでしょう。

保護者の皆さまへ

お子さまの歯並びが気になるときは、まず生活習慣や癖を一緒に振り返ってみてください。早い段階で原因に気づき、改善に取り組むことで、将来的な矯正治療がスムーズになり、安定した歯並びにつながります。疑問や不安があれば、成長期の歯並びに詳しい歯科医師やかかりつけの歯科医院、そして日本小児矯正研究会会員診療所にご相談ください。